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  毎日にもっと楽~を! BLOG Tokyo

2006年2月17日

2004-2006 ジャマイカ

自分主催のワークショップを昨年の6月から始めたんだが、第1回ワークショップの参加者の一人スミス氏(ボグウォーク高校、IT教師)が質問があるんだと、突然やって来た。

この先生、第1回以降のワークショップには参加していない。土曜日の朝は教会に行かないといけないんだって。去年の6月から約8ヶ月間いろいろ試したそうだ。それでどうしてもわからないことを今日聞きに来たそうだ。


こういうのってすげー嬉しい。ワークショップやってよかったなぁって思う瞬間である。

2年間居て協力隊の協力って何か、自分の中でなんとなくわかり始めてきた最近。協力隊は人の派遣で、物資やお金を支援できません。支援できるのは隊員を通じたソフトパワー、例えばそれは技術だったり、知識だったり、作法だったり、文化だったり。活動1年目、言葉の面、経験の面で不利のある若輩協力隊員が支援できるソフトパワーなんてちっぽけなもんなんです。

自分の派遣にかかった経費をそっくりそのままあげちゃった方がその国のためになるじゃないか、と考えちゃったりもします。そんな大金をもらった配属先はさぞ喜ぶでしょう。配属先はいったいそれを何に使うんでしょうか?発展途上国においては特にお金の流れは胡散臭いものがあります。それに資金援助自体は別の制度でちゃんと存在しているのです。本当にお金が必要ならば違う制度で申請すべきで、隊員を呼ぶ必要はないのです。協力隊事業は「顔の見える国際協力」と「日本の若者の育成」なのです。僕ら隊員も途上国で学ぶことはいっぱいあるのです。

さて、アフリカと違って中南米、カリブ海の多くの国は発展途上国というよりは中進国と呼ばれていて協力隊による援助は必要ないと嘆きたくなる時があります。実際どんなもんなんでしょうか?

ジャマイカの一人当りGDP(名目) 3387.519ドル(日本円で約40万円)です。(注) 大雑把にこの値を一人あたりの国民所得と見てしまうと、ジャマ人一人当たり年間40万円の所得ということができます。物価は日本の8割程度で、決して安くありません。電化製品は日本より高額です。月間3万3千円で生活しているのでしょうか?

ともあれジャマイカのGDPは世界79位です。あるところにはお金があるのです。こういった中進国においてはむしろ資金援助ではなくて、ソフトパワーの援助が必要なんじゃないかと考えています。大学もあり専門学校も多いこの国において技術者もかなりいます。ただ、まだ未成熟な政治機構、社会基盤等のためエリートシステムが浸透していて金持ちに生まれた人が大学に生き、そしてエリートになる。エリートたちが自分たちの地位を維持するためそういう仕組を変えようとしない。お金は貧困層にはまわらない仕組が出来上がっているのです。

われわれの協力隊の仕事は、そういった不利な立場に居る人達に対して技術を移転していくことです。長い目でみると技術者の増加は競争を生み、良質の製品、価格低下に繋がると思うのです。教育の機会を増やして健全な競争の促進を助長することがわれわれ協力隊の援助なんじゃないかと思います。

ジャマイカの発展を考えた場合、やはり自国の工業化において他ありません。当然政治改革も必要ですが。ジャマイカの物価の高さは輸入品依存のためです。自国の製品があまりありません。電化製品からお米まで全て輸入品です。アメリカ製・日本製は高額なため、廉価な中国製品が出回っています。買ってもすぐ壊れてしまいます。自分の職種はコンピュータ技術で隅っこの方でジャマイカの工業化の一役を買っているんだと自負しています。ジャマイカはカリブ海がきれいで観光業が外貨獲得の手段です。ただ、ホテルの予約システムはアメリカの旅行会社に独占されています。ホームページデザイナーすら不足していて素敵な観光地が多々あるにも関わらず自ら宣伝できていません。今や検索エンジンから得られる情報は海外旅行には必須です。観光業をIT化し観光システムをスキップすることで獲得できる外貨を増やすことができるのです。こういったジャマ人WEBデザイナーを増やすには、小学校、中学・高校で生徒たちがコンピュータにアクセスできる時間を増やしてあげることなのです。ジャマイカIT隊員・メンテナンスチームは小学校に対して無償で修理を行っています。パソコンを1台修理することによって生徒のパソコン利用時間が長くなり、その中から一人でも多くの生徒が技術者になっていけばいいなと思います。

世界の全ての国が貧富の差がないようになれればいいのですが、災害、病気、気候、宗教、歴史、差別などいろいろな要素がそれを妨げています。また、国民一人ひとりを見ても一生懸命な人、怠け者がいます。一生懸命な人と怠け者を平等にすべきでしょうか?やっぱり一生懸命にならないと世界は発達しないと思っていますが。そういう意味で貧富の差は出てしまうけど、国家のあり方としては社会主義・共産主義ではなく、資本主義がいいのかなぁと思います。ただ、資本主義ってのはスタート時点で金・物・情報を持っているやつが勝つ仕組みになっているので資本主義で自由競争したら発展途上国が先進国に勝てるわけないんです。ITの分野はそれが顕著です。情報の南北問題なんていわれています。なので健全な競争をうまく取り入れて、敗者にもセーフティネットを用意してまたいつでも競争に加われる仕組みがいいなと思います。修正資本主義を進めた修正資本主義福祉国家なんていうのはどうでしょうか。

当然日本だけのことを考えていればいいわけでもなく、日本の発展を資本主義によって実現し、日本の製品を海外に買ってもらっている以上、資本主義によって生まれる貧富の差を埋める努力の必要があると思います。ジャマイカで走っている車の90%以上が日本車です。そういうギャップを埋める援助という意味も協力隊にはあるんじゃなかなぁと思うわけなのです。

その国に住む人にとって幸せとはなんでしょうか?

僕のジャマイカでの旅行はとりあえずあと5ヶ月で終わります。
その時、ぼくは何を思うのでしょうか。
もっといろんな所に行きたい、いろんな生活を見てみたいと思います。

自由とは平和とは何か、国家とは家族とは何か、柄にもなく考える今日この頃です。

(注)名目なので物価を考慮していないため日本と単純比較できません。また、GDPは海外からの送金を含まないため、それを含むともう少し豊かなのかもしれません。



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