2008年9月 2日
進化しすぎた脳
池谷裕二著の「進化しすぎた脳」を読んだ。脳科学の一般向け入門本で、中高生でもわかるように簡単に説明できるので、これ一冊読めば人間の脳とはどんな働きをしているのか、わかった気になれる。
人間の脳はよく、ほとんど能力を使いこなせていないというけれど、著者は将来予期せぬ環境の変化に適応できるように、今の環境より「進化しすぎている」のだと前向きに捉えている。
印象的だったのは、記憶があいまいなのは、記憶力が弱いせいだけではなく、脳が「あいまい」に記憶する機能を持っているからだという。
たくさん覚えないとならないものの共通点を見つけて、一般化・抽象化して記憶しようとするメカニズムなのだ。そして、抽象化したものを他の事象に応用して世の中を理解しようとするのだ。
脱線するが、プログラミングでも、オブジェクト指向というのはまさしくこれで、共通の部品(抽象化)をまず書いておいて、それをインスタンス化(具体化)してプログラミング効率をあげる手法である。
昔、「単なる丸暗記はよくない」と言われた。丸暗記は、自分の経験的にすぐに忘れてしまう。たぶん完全に記憶から抹消されたわけではないが、思い出すのは極めて困難だ。実は、学習スピードを上げると、共通性を見出しにくくなる、つまり応用が利かなくなるという話も面白かった。
脳を知れば知るほど、人の体はよく出来ていると感心する。
面白いっす。
- by editor
- at 22:15
編集長のおすすめの一冊!2010
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