2009年4月 6日
【山形】おくのほそ道の山寺へ
閑さや岩にしみ入蝉の声 (しずかさや いわにしみいる せみのこえ)
国語の授業で習った有名な句は、「おくのほそ道」芭蕉句集に収録されている。冒頭で
山形領に立石寺と云山寺あり。慈覚大師の開基にして、殊清閑の地也。
とあり、この山寺が山形にあるのだ。立石寺という山寺は文字どおり、山の上にあり、拝むには1015段の階段を登らなくてはならない。これが結構しんどい。登る途中、神聖な森の中仏像とか杉の木とかがあって、1段づつ登ると煩悩から開放されるのだとか。
結構な段差なので、登ることに集中していると、頂上付近では余計なことなんぞ真っ白な状態になります。芭蕉もそのようにこの山を登り、せみの鳴き声を聞いたのだろうか。
4月には当然、蝉はいないが、自分の呼吸だけが聞こえる、確かに静寂な空間だった。
頂上まで登りきると、谷あいの集落を見晴らすことができる。空気もよく、心地いい。
蔵王温泉から空港までの途中にあるので行きやすい。JRも山寺駅があるので、アクセスがよく車がなくても気軽に行ける。
おくの細道
山形領に立石寺と云山寺あり。慈覚大師の開基にして、殊清閑の地也。一見すべきよし、人々のすゝむるに依て、尾花沢よりとつて返し、其間七里ばかり也。日いまだ暮ず。梺の坊に宿かり置て、山上の堂にのぼる。岩に巌を重て山とし、松栢年旧土石老て苔滑に、岩上の院々扉を閉て物の音きこえず。岸をめぐり岩を這て仏閣を拝し、佳景寂寞として心すみ行のみおぼゆ。
閑さや岩にしみ入蝉の声
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現代語訳
山形藩の領内に立石寺という山寺がある。慈覚大師が開かれた寺であり、とりわけ清らかで静かなところである。「一度見ておいた方が良い」と人々に勧められ、尾花沢から引き返すように出かけたが、その間七里ほどであった。着いた時は、日はまだ暮れていなかった。ふもとの宿坊に宿を借りておいて、山上の堂に登った。岩に岩を重ねたような山姿を呈し、松や杉、ひのきは老木となり、古くなった土や石は滑らかに苔むし、岩の上に建つ多くのお堂の扉は閉じられており、物音ひとつ聞こえない。崖のふちをめぐり、岩を這うようにして仏閣を参拝したが、すばらしい景観は静寂の中でさらに映え、ただただ心が澄み渡っていくようであった。
なんと静かに思えることよ。その鳴き声しか聞こえず、かえって静けさがつのるように感じられる蝉の声は、まるで岩々にしみこんでいるかのようだ。
出典:おくのほそ道文学館
- by editor
- at 23:26

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